《004》HBR〔アップルストア成功の教訓〕2012年7月号

HBR〔アップルストア成功の教訓〕2012年7月号
  〜ロン・ジョンソン(JCペニー・カンパニーCEO)〜

<小売業界のカリスマが語る〔アップルストア成功の教訓〕>

2000年にターゲットから、アップルの直営店担当シニア・バイス・プレジデントに就任したロン・ジョンソンは、スティーブ・ジョブズと常識を破る施策を次々と展開しながらアップルストアを立ち上げた。その結果アップルストアは、1店舗当たり年間平均4000万ドルを売り上げており、今日では、小売業の歴史上最高の業績を誇る小売業となったのだ。2011年11月にロン・ジョンソンは、老舗百貨店JCペニーのCEOへの就任が決まった直後のハーバード・ビジネスのインタビュー論文である。
その後のアップルストアの隆盛とJCペニーの実態を知った上でこの論文を読むことは興味深い。

<今後も実店舗は、顧客接点の中心である>

◎昔ながらの小売りモデルは、破綻してはいない。実店舗は依然として、人々が商品を手に入れるための強力な場として機能しており、50年後も変わらないと思う。

◎消費者の購買行動は、インターネットに劇的に移行しているのではなく、実際に成長しているのは、実店舗を持つ小売業者によるマルチチャンネル化である。

◎一方が成長すると他方が衰退するという構図ではなく、二つの世界が統合されつつある。

◎小売店は、単に商品の売買を行うことのみ目的ととらえるのではなく、人々の生活は豊かなものになるように、サポートすべきである。

◎買い物客がもっと自分に合う洋服を見つけるサポートをするとか、コミュニケーションの方法を変えるような新しいデバイスの紹介が出来る小売店が求められている。
※デバイス・・・装置、仕組み

◎単なる商品提供の域を超えることによって、商品価値を高める。

<アップルストアの目的は、「売ること」ではない>

◎ほとんどの小売店は「いかにして数多く売るか」という取引重視の考え方をしているのを「価値創造重視」の考え方に移行するためには、根本的な見直しが必要である。

◎アップルストアは、従来のモデルを微調整して成功したわけではない。

◎「試してから買う」というコンセプトも徹底的に考え直した。顧客は、実際に使用するアプリケーションや各種のコンテンツが搭載された状態の製品を試用することが出来るようにし、使い方を教えてもらうことは出来る。製品を購入した場合は、セットアップされた状態で持ち帰ることが出来る・

◎購入後にサポートが必要となれば、再び来店して個人レッスンを受けることが出来る。製品が故障したら、たいていの場合はクリーニング店にワイシャツを出した時より早く、修理された製品を受け取ることが出来る。

◎店員の仕事も抜本的に見直した。アップルストアの店員は、歩合制ではない。彼らの仕事はただ一つ、アップル製品に限ることなく、顧客それぞれがぴったりの製品を見つけられるようにサポートすることである。

12月21日ここまで

<百貨店の優位性は、依然強い>

◎百貨店は、過去30年間で、自ら下した決断により、小売りインフラにおける重要性を低下させてしまった。

◎アメリカで大規模小売店や各種専門店、さらには新しい買い物形態が爆発的に増加したなかで、百貨店は競争に参入することなく独自の役割を放棄してしまった。百貨店の魅力であったカテゴリーや品揃えから手を引いてしまった。

◎百貨店は、過去を守ろうとすることに熱心だったが、未来については考えてこなかった。

◎百貨店はあらゆる戦略的優位性を備えている。たとえば、最も低い不動産コスト、商品入手の並外れた容易さ、圧倒的な規模のマーケティング力、専門店の併設、等である。

◎消費者はウオルマートが好きだし、ターゲットも大好きだ。したがって百貨店の問題点は、規模や立地、または物理的な設備等ではなく、イマジネーションの欠如にある。

<百貨店は、復活するか!?>

◎10年ごとに、一社か二社、ゲームのルールを変える小売業者が現れ、業界全体に多大な影響をあたえる。

◎1980年代は、ウオルマートが、ITの新たな利用法、サプライチェーンのイノベーション、価格設定で一時代を築いた。

◎1990年代は、ギャップが、品揃えを絞ったプライベート・ブランド商品と斬新な展示方法や店舗体験により、専門店を再定義した。

◎2000年から現在に至までは、eコマースの最前線に立つアマゾン・ドットコムと優れた顧客体験を提供するアップルストアが小売業界に多大な影響をもたらしている。

◎次の10間に何が起るかはまだわからない。ただ小売業をリードする企業一社が現れるであろう。それがどの企業かが問題であり、百貨店の一社である可能性もある。

◎おそらく、バーチャルな体験と実際の体験を最もうまく統合した小売り業者がリーダーになるであろう。

◎モバイル・インターネットと店内体験の統合が重要な要素となる。もっと広い意味で云えば、新たな価値を生み出すような形で統合を実現した企業がリーダーになるであろう。これは、コストの低さと実行のスピードを極限まで競う世界である。

12月24日追加

<データよりも直感がはるかに重要>
〜直感とデータとのバランス〜

◎小売業は、データを信頼するよりも、自分の直感を信頼するほうが遥かに重要である。

◎もし、データだけに従っているのであれば、結局のところだれもが同じ場所に行き着いてしまう。これこそが、今日の小売業界における問題の一角である。混迷を打破するには、これまで誰もしなかったことをするには、自らの直感を信頼する必要がある。

◎ジーニアスバーの設置する時の直感は、「コンピュータを修理したい人々に対する最大のサポートをどのように提供するか」。「<i-pod>の問題で損なわれた恐れのある顧客との関係をどのように修復させるか」であった。

◎顧客との信頼関係を築くには、実際に顔を付き合わせるしかない。それが人間というものだ。小売業のあるべき本質はそこにある。

◎小売業の歴史を見ると、成功するための方法は二つある。ウオルマートとように低価格で勝負するか、あるいは、ターゲットのように差別化で勝負するかだ。


顧客を追いかけるのだはなく、顧客をリードせよ。

<村上まとめ解説>
ロン・ジョンソン氏の一番注目され、華やいでいる時のインタビュー論文です。
私自身米国、日本のアップルストアで氏のお話の裏付けた意見をして、改めて衝撃を受けたものでした。もうひとつショックだったのは、日本の小売業経営、コンサルタントが一切関心を示さなかったことです。
サービス、経験価値、情報アクセスの革新です。
前段で百貨店「小売りインフラ」からの後退の指摘がありましたが、スーパーマーケット業界も同様です。スーパーマーケット業界は、「小売りインフラ」の立ち位置をコンビニに明け渡し、高質スーパーという定義不明のフォーマットへ撤退しつつあります。
その視点からも教訓的な指摘、問題提起はありそうです。
最後に、ロン・ジョンソン氏のJCペニーでの活躍は聞かれませんでした。結果論として、アップルストアでの氏の業績は、スティーブ・ジョブ氏の強力なバックアップあっての成果だったのかもしれません。

<完>

次にご紹介する論文は、〔デジタルを取り込むリアル店舗の未来〕2012年7月号〜ダレル・リグビー(ベイン・アンド・カンパニー パートナー)〜です。この号は興味深い論文が”目白押し”です。特集タイトルが〔小売業は復活できるか〕ですから・・・
面白いです。ご期待下さい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加