イズミヤ総研(vol.91)シリーズ:流通ビジョンを聞く【第二回】

イズミヤ総研(vol.91)
[特集]確固たるビジョンを基盤とした成長戦略
~掲載内容~

※イズミヤ総研(vol.91)~定価1050円~
[特集]確固たるビジョンを基盤とした成長戦略
をご希望の読者の方(先着5名)に差し上げます。お名前、会社名、役職,住所(送付先)電話番号、を明記の上メールで応募ください。~sinobumurakami@hotmail.com~

シリーズ:流通ビジョンを聞く【第二回】

(談)SNSムラカミ研究室 代表  村上 忍
(聞き手)株式会社イズミヤ総研 代表取締役社長  清水 正博

戦後の日本の流通史を振り返って

[清水] 今日は、日本とアメリカの流通業界の歴史を数十年見てこられた先生に、思いを伺いたいと思います。まず、戦後の日本の流通史を振り返って、成功したと思われる点、課題として残されているものについてお聞かせください。

[村上] 日本のチェーンストアの歴史となると、渥美先生を抜きにしては語れないし、また先生の定説(持論)と結果〈成果〉に関して論評したり、場合によっては批判したりすることなしには話が始まりません。
日本の流通の成功は、早期に、スーパーマーケット・チェーン、日本型GMSチェーンを中心に、小売業の近代化と規模拡大をチェーンストア理論(実務論)のもとで果たしたことです。これは渥美俊一という一人の啓蒙家と多くの若き小売業経営者とロマンと情熱の賜物です。

課題は、チェーンストア経営方式が規模拡大の方法論として“万能”であったため、米国小売業近代化の本質の究明を蔑ろにしてきた点があることです。一人のカリスマをフォロー出来なかった我々の責任ですが。

それはさておき、日本の流通史といえば、アメリカがすべてです。しかし私たちがアメリカの流通史のことをどれだけ知っているかというと、実はアメリカの流通史に関しては、日本の小売業者も、指導する学者も、あまり研究していないのです。
でも私は、「それは間違いである」と思っています。アメリカの産業史の中の流通業として見なければ本質論を見誤ることになる、と。

ア メリカは、植民地時代イギリスが統治していた13の州から独立したというところから話が始まって、だんだん拡大していくわけです。その際に何が中心になっ て展開されたかというと、それは鉄道なのです。その前は帆船があり、湖と海をつなぐために運河をつくって帆船を馬で引くという形で商品を西へ西へと持ち込 まれました。その次には蒸気機関車が登場して、生産地と消費地が結ばれました。
しかし、急速な発展につながったのはやはり鉄道と電信電話によってです。鉄道の強いところは、そこに電信電話の基地がつけられ、アメリカ全土に拡がったことです。近代的な都市体制は鉄道によって生まれたのです。

近 代化した小売業は、近代化された都市が構成されたところに生まれてきました。ですから、アメリカの場合、近代小売業の原点は百貨店です。百貨店は、高級な 商品が中心になっているだけのように見えるのですが、実は商品回転速度を速めて、原価を下げて、売価の安さで既存の業態を席捲したのです。だから、アメリ カ流通業の近代化の証はやはり価格であり商品の回速度なんです。

百貨店の後、通信販売が登場しました。なぜ通信販売なのかというと、当時、お金を持っていたのは地方の農家でした。でも、大都市までの交通の手段がない。そこで、その市場を求め、獲得するためにシアーズなど通信販売が出てきたわけです。
そのあとに出てきたチェーンストアは、既存の近代化された百貨店や通信販売がそれぞれ大都市と田舎で強いため、その合間をとって地方都市、あるいは大都市郊外から始まっています。そして取扱商品は食料品と雑貨です。

通 信販売も、チェーンストアも、先の百貨店が作り上げた近代化した経営方式をベースにしています。このように近代的経営方式は、百貨店から始まって、ずっと 改善され、深められてきて、チェーンストアまで来たのです。チェーンストアだから商品の回転速度が重視されたのではなく、百貨店の時代からそうだったとこ ろがおもしろいのです。

チェーンストアの経営方式の効果性を逸早く知って、取り入れたのがシアーズなんです。シアーズは、ほかのスーパー や雑貨屋の店舗数が何十店ぐらいの間に、既に300店舗を超える店舗を展開していました。だから、シアーズがチェーンストアとしての近代的な経営方式を中 心的に確立していったといえます。1960年代、70年代には日本の小売業もシアーズに研修生を送り込んで勉強したものです。ほんとうによくできている会 社で、これはもう未来永劫、シアーズの時代になるのではないかと思ったのですが、瞬く間にウォルマートの時代になってしまいました。

当 時、商品の回転速度のほか、内部化というコンセプトが大きな意味を持っています。内部化とは、関連の事業を社内に取り込んで効率を上げようというもので す。たとえば物流を内部化し、物流会社を持ってしまう。シアーズは、メーカーを自分で持ってしまい、ほとんどプライベートブランドにしました。シアーズの 隆盛期は、白物家電など一般のメーカー製品よりもシアーズのPBの方に定評があったのです。

[清水] 「ケンモア」ブランドですね。

[村上] ケンモアは、デザインは劣るが頑健さでは勝ると言われました。
こ のように、商品の回転速度と内部化が企業の中心になっていました。百貨店も通信販売も内部化を推し進めました。そしてウォルマートは、既存のメーカーを” リテール・リンク”というシステムで内部化してしまったんです。そのために今、メーカーは、ウォルマートの言うことを聞かずに生きていけないようになって いますよ。
そう考えると、次はアマゾンだと思うんです。いや、今もうアマゾンに移っている、というのが私の考えです。アマゾンで中古の本を買うと、それを出品する一般の人から届きます。そこまで内部化している。バーチャルな世界での内部化は、そのレベルに達しています。

[清水] C to Cですね。

[村 上] ウォルマートの後は当分出てこないのではないかと思っていましたが、もう出てきているのです。お客様がどれだけウォルマートとアマゾンを使い分ける かわかりませんが、今後はアマゾンの比率がどんどん大きくなっていくだろうと思います。そして、そのあとはまた更に別の企業が出てくるでしょう。
ア メリカをそのような形で見てきたら、その流れできたときに、日本のチェーンストアは、(先輩方には失礼ですが)量販店だなんだと表面的なところを学んで、 中途半端に日本型にしてしまったように思います。日本人は日本型にするのがうまいんですよね。大きな成功はしないが、中くらいの成功をするのがうまい。

[清水] 画期的なイノベーションは少ないですね。

[村 上] そうなんです。それで量販店も、シアーズのようなGMS志向になりながら、百貨店志向(コンプレックス)も強かった。アメリカのチェーンストアとし てのスーパーマーケットは、地域で強い。日本の小売業の人々はアメリカから学んできているわけだから、アメリカの実態からその背景にある本質をしっかり学 んだ上でやるべきだっただろうと思います。今でも、アメリカで何かが起きると、その表面的なところをパッと真似ようとする。そういう意味で、学び方がヘタ なんです。

今、アメリカで最も学び方がうまいのはウォルマートだと思う。毎年毎年、業態に関係なくベンチマーキングの企業を決めて学ん でいます。GEとウォルマートは、お互いにベンチマーキングして学び合っていましたよ。日本は、真似ることは上手だが、本質的なものを学ぶのはあまり得意 ではないところがありますね。

アメリカの視察に行って、どこがよかったかと訊くと、皆さん、ホールフーズだとおっしゃるのですが、ホー ルフーズはアメリカの人口のほんの何パーセントかの人たちのための店だということを理解しなければいけません。そして今、アメリカを支えているのは、ウォ ルマートでありダラーショップである。人口比率の一番高い、プアー層の人たちを支えているのです。そういう意味では、アメリカは正解を教える国ではなく、 「こうすると、こうなってしまう!?」という例を見せてくれているのかもしれません。
渥美先生も晩年は、ヨーロッパの流通を一所懸命研究されていたそうです。最後の最後に気づかれたのかもしれません。アメリカとは違う、ヨーロッパの企業の流れも学ばなければならない、と。

[清 水] 歴史的にもマーケット的にも、ヨーロッパの方が日本に近いですからね。私は、日本のスーパーマーケットが学ぶべきはロンドンだと思っているんです。 大量交通機関も発達し、テスコを頂点に、それぞれの企業が市場をシェアし合っていますから。マーケットの関係など、日本と非常に近いですね。“質”を重視 する国民性も似ています。日本の場合はあれほど寡占化はしないでしょうが。

[村上] イギリスは消費者のレベルがアメリカより高いですね。アメリカは夢見る国であって、実際は夢に達しない人がほとんどなんですが、それでも夢を見続ける国なんです。

[清水] そうですね、やはり移民など、所得が底辺の人が多数を占める国ですから、そこが支持層となってウォルマートやダラーストアが伸びてきたんですね。

[村上] ですから、量販もほどほどにしか伸びない。スーパーマーケットはスーパーマーケットで、ちゃんと収まっているがジリ貧です。
日本では民度が違います。生活の質。どれだけ文化性を持っているか。働いている時間と休みの時間はどうか。そういう違いを最近になって感じています。
た だ、運が良いことに私は西友にいて、会社からジュエルやシアーズに派遣してもらって、まるごと学ばせてもらえる環境で学べました。当時の先進企業では、 チェーンオペレーションなども見事に整備して実施していました。あれはやはり、ヨーロッパではなくアメリカなんです。アメリカの歴史の中での小売業の発達 だから、チェーンストアという形はあるのです。

[清水] 確かに、忠実に学んできたニトリさん、ユニクロさんは業績を伸ばしてきていますから、そう意味で、日本の成功事例はやはりアメリカをきちんと見て、日本流にしています。

[村上] 成功しているところは、画一化と標準化は異なるという点をよくご理解なさっています。チェーンストアの仕組みや標準化に関する理解度が違うのです。
チェーンストアの場合は、標準化は利益の元なのです。標準化のレベルで利益が決まる。下手な企業は標準化の形を、お客様に見せつけるんです。お客様はそれ に反発してしまう。ところが、上手い企業は商品から売場から、お客様には標準化のひょの字も感じさせないが、オペレーションは標準化しています。お客様を 型どおり歩かせようとか、レジに並ばせようとか、古典型のチェーンストアの考え方でやっているところは、本当のチェーンストアを学んでいないんです。本当 にどこよりも安ければ、標準化を前面に出した売り場も安さの演出しなりますか。

[清水] そうですね。成功したところとそうでないところは、その理解度の差ですね。また、標準化を否定したところもあるのですが、そこもうまくいっていないんです。

[村 上] 多店化して標準化を否定してはいけないんです。トレイダー・ジョーズも、売場を見ると「標準化など我々は嫌いなので全然やっていません」という顔を していますが、バックヤードの機能性は全店同じなんです。アメリカのスーパーマーケットはそうですね。アルバートソンズやパブリックスやHEBなどいろい ろなスーパーマーケットを見ましたが、バックヤードの造りは全部同じなんです。あたりまえですよね。チェーンストアの場合、中心はロジスティックスですか ら、そこは標準化で。たとえばパブリックスなど、売場は店ごとにバラバラですが、そんなことは構わないわけです、ロジの標準化がしっかりできていれば。日 本の小売業はオペレーションの重要性を理解されていない。

十年後の流通ビジョン

[清水] 今から十年後の流通のビジョンをお聞かせください。

[村上] 流通ビジョンという形では「十年後」はないと思います。流通という概念は消えるのではないでしょうか。

[清水] そうですね。今まではわれわれの先入観の中で、小売はこういうもの、というような考えがありましたが。

[村上] その頃には、バーチャルの世界とリアルの世界が入り混じってきていますから。今は、どちらが仕入れをしているかで分かれていますけれど。そういう意味で、十年後の話をすると鬼が笑うでしょう。

[清水] 流通ビジョンは、経済産業省などが何度か創っています。日本の企業にもっとグローバルに展開せよ、などという観点で。小売ももっと外へ出て他流試合をしろ、と。今までは輸入するだけの形だったものが、出店の形に諸外国に行くことが増えてきていますね。

[村上] それは現状の流れの延長線上でそうなりましたということです。大手チェーンは日本国内よりも中国での出店を重視していますが、確かに、広さと成長性を考えれば何千店舗展開ということもあり得るんです。

[清水] 中国の小売レベルはまだまだ、日本の60~70年代のレベルですからね。

[村上] 十年後はもとより、今現在においてわからない話として、ミャンマーの自由化問題があります。ローソンが店を出すと発表していますね。
ア メリカのポバティラインというのは一人が1日1ドルで生活するレベルで、その層が若者のうちの18%を占めています。日本では考えられないぐらいに低い が、それでも教会の炊き出しなどを利用して生きていける。私がそんな話をすると、ミャンマー通の娘が、ミャンマーではひと月1ドルだ、と言うんです。
ひと月1ドルで生活する人間がほとんどの国で、ローソンは、どの層に対して何を売るのだろう。信じられないと思いました。
けれども、もう始まっているんですよね。日本の企業進出などの流れに関わった現地の人が中間層となってお金を持つわけです。その人たちの生活のレベルは、 日本など海外から来た人たちに影響されていますから、給料レベルが上がると海外から来た人たちの生活に合わせ始める。ローソンは、最初は日本など海外から 来た人たちが使う店でも、次にはお金持ちになったミャンマー人が利用し始める、という形になってくるんだろうと思います。

[清水] 中国 でもスターバックスが、本国と同じ値段なのに、店には中国人がいっぱい入っている。中間層がもうそのレベルまで来ていますからね。だからイオン、平和堂、 セブン&アイなどが地方百貨店として成功しています。そういう中間層が、次はインドやベトナム、タイなどでも拡がっていく。やっぱりアジアの時代ではない かと思います。

[村上] さきほどおっしゃったように、国は十年ビジョンなどを立てなければなりませんし、国家の財政計画も書かなければいけない。ただ、小売企業が十年計画といったときに、もう脱小売業しかないのではないでしょうか。
小 売業の既存の業態という感覚は、もう今でもだめだと思っています。たとえば、本の売場は本以外の売場なんです。ブック・バラエティ・ストアです。本“も” ある。脱業種・業態だと思います。要するに、そういうものから離れたところに経営のアンテナが持てる人が経営者として成功するのでしょう。既存の業態を整 理しなければなりません。
今、西友ウォルマートがものすごく業績を伸ばしている。何によって伸びているかというと、マーケティングだと言う。あの 会社でマーケティングをしている人は、スーパーマーケット業界の人ではないんです。全然違う業界から来た人がマーケティングをやって成功しているんです。 今、西友は独特の雰囲気をお客様に与えていますね。

[清水] そうですね、テレビCMとか雑誌とか。

[村上] あれがマーケティング力なんでしょうね。

[清水] 「こういう方向性を」と出したのではなくて、やっているうちにそれが見えてきた、ということでしょうか。ビジョンがあって、そこに行こうというわけではなく、試行錯誤する中で出てきた成功事例だと。

[村上] そうですね。ビジョンは必要だ、掲げなければいけないものだ、ということはわかった上で、どんどんビジョンを作り変えているんです。作り変えることに全然躊躇しないんです。

[清水] とらわれてしまうと、硬直化してしまうんですね。

[村上] 皮肉ですが、“流通ビジョン”という設定が意味をなさない時代となっていることは間違いないでしょう。

現在なすべき喫緊の課題と着手点

[清水] 日本の流通業が為すべき、喫緊の課題はなんでしょうか。また、どのようにそれに対峙していくべきでしょうか。

[村上] 実務面では、パートタイマーの所得控除枠の問題対応です。チェーンストア企業各社の負担増は右肩下がりの経営環境下には、深刻な問題です。この対応で他社に差をつけるチャンスが生じたと前向きに捉える側の企業になるべきです。
それには、パートタイマー主体の人事、労務体系を早急に打ち立てることです。同一労働同一賃金の原則違反の下でのパートタイマー活用が将来に持ち越さない(脱する)チャンスととらえることです。

実は、この種の難題は、生き残り組と淘汰される組を選別する機会なのです。
そ れとは別に、人材開発はものすごく重要だと思います。実務レベルのトレーニング(訓練)の対象となるものと、エデュケーション(考え方教育)の分野のもの とがありますね。私ども実務レベルの現場での教育の場合は、トレーニング主体で、トレーニングの意味合いを伝えるためにエデュケーションするというよう に、両者を併せて行うんです。トレーニングだけやると、機械的に繰り返すことばかりになる。意味合いを理解するためにはOJIや改善だというのはやはり、 エデュケーション部分が大変重要なんです。エデュケーションで作業レベルのものを改善させてしまおうというのは日本人の得意分野ではないか。

一 般論の教育というのは、ある場面で必要かもしれないが、企業が主体的に取り組むのはどうかと思います。その場合、まとめとして、「この問題は、自分の会社 (仕事)にとってどう解釈すべきものか」を考えさせることです。自分の仕事、自分の会社にとっては、どういうプラスの影響を今日の話から受けたかを考える というふうにしないと、残らないし、意味がない。

[清水] そうですね。自分で考える力をつけさせないと。

[村上] そうです。ただ聞いているときは、そんなつもりで聞いていませんから。聞き終わったときに、そういう質問をしてあげると、企業内教育として良いと思うんです。
日 頃から問題意識を持っていないと、話を聞いたり、教育を受ける場面にぶつかっても感じないんです。問題意識というより、解決すべき問題(課題)を持ってい ないといけないんです。何が問題(課題)を持っていれば、いろいろ学ぶ機会があったときに、抽象的な、違う分野の話ではないかというときでも、答え(ヒン ト)が見つかることが多いのです。同じ業界の人の話より、それ以外の人の話の方が役に立ったりしますよね。

[清水] イズミヤでは、先生 にも講師をしていただいているマネジメント・リーダー研修でも、それを修了したあとにアメリカ視察に行くと、問題意識が高いし、自分の店をどう戦略的に改 善していこうかという思いがありますから、アメリカもそういう目で見てくるんですね。しっかりした目で見てくるので、学び方が全然違います。

[村上] ええ、全然違いますね。系統立てて学んで、系統立てて問題意識を持って、それを持って乗り込んでいくわけですから。
私 は毎年アメリカに行きますが、毎回、ウォルマートのスーパーセンターに入るときに何か感じられなかったら、私の方がこの一年間進歩していないのだと緊張し た気持ちになります。進歩していないのなら、続けて来ても仕方がないと思うんです。ありがたいことに、ウォルマートのスーパーセンターやアルバートソンズ など、昨年見つけられなかったことや、今年新しく始まったことをふんだんに見せてくれる(見つかる)ので、まだまだ行き足りないぐらいに学ぶところがある んです。

[清水] 1年ですごく変わっていますよね。

[村上] 変わっていると言えるのは、しっかり見ているからですよ。変わっていないと言う人が多いんですから。アメリカの小売企業はほんとうに変えますねぇ。

[清水] ええ、変わりますね。

[村上] ウォルマートなど標準化の権化みたいに思うんだけど、どうしてあんなに変えるんだろうかというぐらいに変えますね。

[清水] 何千とある店を変えるんですから、すごいですね。

[村上」 品揃えも大きく変えます。
だから海外研修では、全般的に学んだものがどれだけ身についたかを感じるものの量や質でわかります。どんな小さなことでもいいんだけど、ほんとうに感じ入ったというものを見つけてくれればそれでいいんです。
それにしても、イズミヤ総研のような研究機関を残しているというのは、イズミヤさんというのはほんとうに良いことをおやりになっていますよね。いろいろな ことをされていると思いますが、この幹部研修の流れなどはものすごく良い経験をさせられているなぁ、受講者はツイている人たちだなぁと思いますね。

製・配・販に期待すること

[清水] 最後にメーカーさんと卸さん、製配販の製配の部分は今後どういう方向で努力していったらよいかをお聞かせいただけますか。

[村 上] ロジスティックスの方々と小売業というのは、思想(目的)が共有化されていないたいかないと私は思うんです。お客様にどれだけ良いものを、良いレベ ルでお渡ししようかという競争をしているわけですから、タッグを組まないといけないと思うわけです。またその源にメーカーさんがあるわけですから、製・ 配・販トータルで考えていかなければいけませんね、どこが中心でということではなく。

[清水] 垣根が低くなってきていますね。小売がPBをつくったり、メーカーも卸も直で販売し始めたり。

[村 上] そういう意味ではもう、さきほどの話のとおり、内部化競争をしているわけです。内部化に対してウォルマートなどはリテイルリンクなどという名前で、 「消費者のために、こういう形で一番安いものを提供する。そのためには私どものルールに乗ってくれ」ということを主張しています。「そちらだけで利ざやを 稼ごうとしないでくれ。決められた方向でやっていきながら、私どもの売上はどんどん伸ばしていくから、伸ばした利益で伸びていこう」というリテイルリンク の思想の中で回していこうとしているわけです。
全部自分のところでやった方がいいものもあるし、組んでもいいわけです。そういう意味では垣根はなくなりますね。

[清 水] アマゾンの話のように、何屋なのか、わからないですね。アップルにしてもそうですが。どの産業に属しているのか。中で分業しているわけですよね。製 造委託して、物流委託して、店舗も自前でやる、ということになると、どの分野を自分でやることにするかは、その時々の戦略ですね。

[村上] まさにそれは戦略です。

[清水] セブン・イレブンもまさにそういうことですよね。どの部分が自前なのか、わからない。あるいは自前はひとつもなく、プロデュース業に徹している。その部分が利益を出していて成長産業なのかなと思います。

[村 上] 一緒に学んでいかなければいけないということは感じますね。別々に勉強して別々の利害の話をしても仕方がないので、みんなで話をして、トータルでど れだけお客様にプラスのことができるのかということを一緒に考えなければいけない。バラバラだと、お互いにやり合わないといけませんから。それをやり始め ると、お客様が忘れられますね。一緒に議論して、「ここにイズミヤのお客様がいる。このお客様に対してどうやって一緒にやろうか」と。そういう話をする場 が、イズミヤさんではイズミヤ総研だと思うんです。

[清水] 今、研究会を組織していますが、それをもっと進化させていきたいですね。今 はまだ講演会が中心なんですが、商品部の発表などもあり、こういう中で次のステップとして何か一緒にやっていく、異業種交流のような、具体的な計画をして いくような仕組みを考えていきたいと思っています。いろいろ枝葉をつけていくと、高い生産性が上がりそうな部分が結構あると思っているんです。賛同してく ださるところもたくさんあると思います。
<完>

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