◎【TSCO】が米国で展開する新しい業態[Fresh & esay]の研究(2011年9月の現地実態調査報告)

はじめに

英 国の総合小売企業【TESCO】が、米国で展開する小型業態[Fresh & easy](300坪弱)は、米国市場のニッチを狙うチェーンストア業態としての個店レベルでは、完成度を高めつつあることが各店の売り場展開に見れとれ た。特に、ローコスト・オペレーションの視点では、マルチ・ドメイン・スキルを駆使して週500人時オペレーションと切れ味を磨いていた。

ロ ゴマークに表された“5時05分”の意味づけ〔ヤング・ファミリー~共の働き~が、職場からの帰宅時に自宅でのディナー用食材を買い求める店〕と云う初期 の業態コンセプトから始まった新業態は、今米国本土を市場とするニッチ業態として存立の可能性を判断すべき重要な段階であると推測された。
実験段階という理由をさておいても、175店舗という店舗数は少な過ぎる。この間、出店した店舗を多数撤退いている。
これが想定した試行錯誤ならばよいのだが・・・。

米国市場での定着発展のための必要課題項目は明確化されていることは間違いないであろう。それらの取り組み明確化された課題をいくつかは、確立を終えているであろう。例えば、自動発注、マルチ・ドメイン・スキルの個店運営体制、超ローコストの日々の運営は、秀逸である。

しかし、なかなかクリア出来ない課題もあるようだ。その結果が現代の店舗数175店に象徴される出店問題である。このフォーマットの適正立地が定義しきれないまま、出店を繰り返し、はずれ出店の割合の多さに、音を上げているのではないのか。
既存店(175店)の売上高他の数値指標の改善に、ひとまず努力の傾注するつもりなのか。更に、小型のフォーマットの開発実験の話しもある。

初 期に、同社現地幹部から聞いた話で、本来のこのフォーマットの客層(トレーダージョーズの客層とかぶる)と貧困層地域出店の店でも狙いが違うのだけれど低 価格商品がそれなりに売れている・・・という乗り(たとえて言うと、トレーダージョーズとダラーショップの両方の客層狙いのような話し)が、今日の混迷に つながったのかもしれない。
先行投資が大きい業態だけに、正念場が続きそうである。
今回の調査では、確立された分野(運営面)を実務的に明らかにする。

1.一店舗売上高

このフォーマットの経営モデル指標の基本は、[週15万ドル]売上高のようだ。
なかなか全店平均が到達出来ないでいるのではないか。店長たちに、努力目標化してしまうと、方向を間違うことになる。
“ニッチ”フォーマットとしての完成度の問題か?
あるいは、ニッチ・マーケットという切り口が、米国本土では存在しないのか・・・。

※今回の調査店17万ドル(繁盛店) 前回(2008年6月)の調査店10万4千ドル

<対応> ①早期にフォーマット・コンセプト見直しを
②立地選定の精度アップ

2.粗利益率

前回調査 37%(推測) 今回の調査 分からず

3.アイテム数とPB,NBの構成

PB商品とNB商品の買い上げ比率は変わったか(改善されたか)
(初期品揃え;PB商品と50:50の構成が目標だった)

※前回調査アイテム数(PB;1520)3664アイテム
今回の調査アイテム数      5342(1678アイテム増)アイテム
(青果物)今回の調査 301アイテム
※PB比率上昇 前回調査 41.48% 今回の調査 50%を超えている模様(推測)

4.人時、人件費、人時売上高

個店人件費管理コントロールは、マルチ・ドメイン・スキル体制で、ローコスト・オペレーション運営体制は確立出来ているようだ。

※前回調査週当たり人時 665人時(推測) 今回の調査週当たり人時 558人時
前回調査週売上高   104千ドル    今回の調査週売上高 170千ドル
前回調査人時売上高  156ドル     今回の調査人時売上高 304ドル
円換算(100円) 15600円                30400円
前回調査週人件費   66500ドル   今回の調査週人件費 55800ドル
(最低時給10ドル)

5.人材の確保、育成

昨今の景気動向で、頭数は集まるが、マネジャー・クラスの労働力の質となると難しいようだ。しかし、作業者レベルは、訓練ノウハウがあり、マルチ・ドメイン・スキルが徹底しており、従業員の動きはいい。

6.Fresh & easy の作業項目
~シフト表からの読み取り~

(1)ACO(オートマチック・チェックアウト)・・・レジ担当
(2)AMB(アンバー)・・・常温商品の品出し
(3)AMB BS(アンバー・バックストック)・・・常温商品のバックヤードのストッ
ク作業
(4)CASH(キャッシュ)・・・金銭処理作業
(5)CHLLR(チラ―)・・・冷蔵ケース商品の品出し
(6)CLEAN(クリーン)・・・清掃作業
(7)DSD(ディー・エス・ディー)・・・ベンダー商品の品出し
(8)FRSH(フレッシ)・・・プロデュース、ディリー商品の品出し作業
(9)FRZN(フローズン)・・・冷食商品の品出し
(10)GAP(ギャップ)・・・棚商品とバックヤード商品のチェック(補充品出し)
(11)KT(ケーティー)・・・キッチン・テーブル担当
(12)RMBL(ラール・エム・ビー・エル)・・・売場商品の手直し
(13)MYHR(ヒューマン・リソース)・・・会社からのOJI人時(店側の人時に加算
されない
(14)Meal(ミール)・・・食事休憩

※売り場に掲示されていた「作業割り当て表」からの抜書き(現状の作業項目)である。
店の後方に掲示された[store standards]の業務・作業項目とを比較すると、「作業割り当て表」にない項目は、マネジャー業務を推測できる。Priceintegrity ,Backroom
disciplines, Cash Office +/-, Waste、Gap Scan、Cycle Count などである。

※[フレッシュ & イージー]の業態としての特徴を象徴的に示すのが、この店内作業である。たった13項目の作業しか発生させない店舗運営システムなのだ。

この13項目の作業を全員が出来るように訓練する。
店長は、*プライス・カードの差し替え、*見切り品処理、*週次のスケジューリング等は、店長の担当作業とされていることが推測出来るか、後方掲示の数値の
進捗管理の様子から多忙である。

≪今回の調査の総括≫

4回目を迎える[フレッシュ & イージー]の調査は、スーパーマーケットの模範的オペレーションのアルバートソンとの店舗運営の比較と云うかたちでその本質に迫った。
4年目に入っている英国の総合小売業【テスコ】の米国市場への挑戦は、可能性と課題が明確化されたようだ。
まず、ローコスト・オペレーションの構造、体制は、完成したと思はれる。この≪マルチ・ドメイン・スキル≫体制は秀逸である。このオペレーションは、“お客さま第一!”の仕事の優先順位付けとのセットで、少ない人手にも関らずお客さまサービスの質を決して落とさない。
問題が無いわけではなく、むしろ多い。各店の店長は、低い売上でも利益確保に走っていく。多分、インセンティブ制との絡みであろうが、徹底したローコスト・オペレーション追求が気になる。本来のKT(キッチン・テーブル)の機能は大丈夫なのか。

まだまだ客数増が各店の第一の課題とすべき時と思うが、経営(米国のヘッドクォーター)のかじ取りが収益の確保に向き過ぎているとの懸念を感じる。
今、175店舗を展開していると聞くが、いかにも出店のぺースが遅すぎる。
こ の原因は、何が気になる。出店候補地確保に苦戦しているのであろうか。175店の売上高にバラツキが大きい(収益益店に程遠い店が多い)のか。独自の “ニッチ”が確立出来ていないのか。二つ目のDC+加工センターを確保したとの情報を耳にしてから、半年以上経つ。多分、正念場を迎えているのかもしれな い。この数年の動向から、目が離せない。

2011年9月20日(村上忍)

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