◎2011年米国セミナー資料[アメリカ主要小売業・決算推移]データの見方

~この解説は、水野氏(角上魚類)のまとめられたデータの読み方をセミナー参加者用にまとめたものである。~

今回のセミナーでは、食品を主体とする小売業態を中心に有名チェーン店を視察する。
業態ごとに(個別企業ごとに)客層も異なり、購買動機も異なり、来店回数も異なり、1回の買い上げ数、買い上げ単価も異なる。
更には、各業態の収益構造が異なる。ということは、売価設定、粗利益率レベルも異なるわけである。

≪マンダラート≫で収集情報を整理する際に、前提として[アメリカ主要小売業・決算推移]データを読み込んでおくと、アメリカの小売り事情に関する一段と理解が深まるはずである。

◎大雑把な読み方

(01)Walmartは、業態としては、今回視察予定のスーバーセンター業態と旧来からの
ディ スカウンター業態、サムズクラブというホールセール・クラブ業態を世界中に拡大し続けています。さらには小型SM実験展開店(Walmart Express)も進めています。主力は、スーパーセンター業態です。EDLPと圧倒的な品揃えが経営戦略の基本です。粗利益率は、25%強で、ネット利 益は今年1月期で3.8%です。

(02)Targetは、ディスカウンター業態の雄(優良企業)です。スーパーセンター業態もチャレンジ しましたが、どうやら、拡大展開をしない方針をとったようです。その代わりに、既存のディスカウンター業態の売り場に300坪程度のSM売り場を入れ込ん で、新たなディスカウンター業態のフォーマットをものにしたようです。これは、既存の食品小売業には、脅威です。前々から、Walmartにとっては、 Targetは気になる存在なのです。何としても併呑出来ないからです。社風が魅力的でスタッフのモラールの高さにも定評があります。TargetのSM ゾーンも要注目です。   粗利益率は、32%強で、ネット利益は今年1月期で4.3%です。

(03)Costcoは、Walmartのサムズクラブと並んで、ホールセール・クラブの2強で
す。何でも一番を目指すWalmartがどうしても勝てないのです。この業態の粗利益率が13%に弱、ネット利益は昨年8月期で1.7%です。

(04)Kroger は、グロサリー・チェーン系のSMチェーンの代表格の企業です。今回は、Albertsonsの店舗運営の実態踏査をしますが、Albertsonsが SUPERVALUの傘下に入ってしまったので、この業態の経営構造(収益構造)を知るために、この企業の数値を確認します。グロサリー・チェーンは、ナ ショナル・チェーン展開を志向し、グロサリー商品のEDLPを標榜してきましたから、Walmart-supercenterの“餌食”になってしまった のです。この業態では、Safewayを共に生き残っています。傘下にRalphs、Food4lessなどがあります。中産階級家庭の主婦の買い物の拠 点であり続けています。粗利益率は、この業態とすれば28%程度ですが、傘下のFood4lessはディスカウンターですから、粗利益率が22%になって いると思われます。ネット利益は今年1月期で1.4%です。

(05)Publixは、独立系SMチェーンの代表格です。フロリダ半島が拠点で創業110
年を超える非上場企業です。店舗数も1000店を超えます。地域密着でお客さまの評価は群を抜き、従業員のモラールの高さもこの会社の特徴の一つです。同社のドミナントへのWalmart-supecenterの出店も関係なしです。
同社の粗利益率が28.5%(昨年10期)で、ネット利益は5.3%です。

(06)ご存知Whole Foodsです。オーガニックが“売り”の小型店展開を超大型スペ
シャ ルティ・ストアに業態を変えて、あれよあれよと思う間に、存在感のある有名店となりました。しかし、2007年、2008年と赤字に転落してしまいまし た。急速拡大のひずみが出たのでしょうか。この企業の経営陣の面目は、2009年のV字の業績回復です。その間のいきさつはまだ語られておりません。同社 の粗利益率は、34.8%(昨年11月期)で、ネット利益は2.7%です。

(07)Walgreensは、ドラックストア・チェーンの“老舗”的存在で、店舗数は800
0 店を超えます。ドラックストアで出店立地開発には、定評があり、荒れ地にWalgreenの店の建築が始まれば、このあたりに宅地開発が始まるのだなと、 他の小売り者はしると言われたものです。この業態もM&Aで業界地図が変わりました。2007年にCVS Caremarkが、買収で圧倒的に規模でWalgreenに差をつけてトップ企業になりました。この間、三番手企業のRite Aidが、収益構造を崩しています。まだ、動きがありそうです。同社の粗利益率は、28.1%(昨年8月期)で、ネット利益は3.1%です。

(08)The Home Depotは、ホームセンターをアメリカで1976店、カナダで179
店、 メキシコで85店、中国で8店運営しています。アメリカの流通視察に参加された方は、同じくホームセンターのLowe‘sをご存じだと思います。こちらも アメリカで1723店、カナダで24店、メキシコで2店運営しています。ホームセンター業界の2強です。The Home Depotは、業者に強く、Lowe‘sは、主婦層に強いと言われます。両社の粗利益率は、それぞれ34.3%、35.1%であり、ネット利益は、それぞ れ4.9%、4.1%と拮抗しています。

(09)一頃、アメリカでは、パワーセンターがもてはやされました。最近には、この呼び方は影を ひそめました。最早パワーを失ったからでしょうか。今は、スペシャルティ・ストアと呼ばれている、単商品群の大型店で圧倒的な品揃えと価格の安さが売り物 のスペシャルティ・ストアの集まったショッピングセンターでした。
家電のBest Bu、文具のStaples、おもちゃのToy“R”Us、
オ フィス用品のOffis Depot・・・これらのパワーを奪ったのは、Walmart-supercenterです。Walmartは、一つ一つ飲み込 んで行きました。安と品揃えで圧倒してしまうのです。BordarsやBarnes & Nobleのような書店チェーンのようにインターネットの世界(アマゾン)に席巻されたケースもあります。それぞれ生き残りを掛けて戦う企 業、既に勝負がついたケースなどいろいろです。
Barnes & Noble(書店チェーン)は、業態としての市場を失い、身売り先もない状況でしょう。

(10)最後に、ダラー・ストア業態を見てみましょう。
日 本でいう“百円ショップ”ですが、日本と異なる様相を見せています。客層を比較して見てください。お年寄り連れ、いかにも低所得者層の家族ず連れが目立ち ます。品揃えは、冷凍食品、日配商品、肉、野菜も揃っています。最近では、45セント・オンリーとかより低価格戦略を志向しています。Walmartにも 行けない所得層(金額、買い物量も含めて)をアメリカには多いのです。
Dollar Genenarl、Family Dollar、Dallar Treeほか各社ありますか、収益構造を知っておきましょう。この業態の粗利益率は、それぞれ32~35%程度、ネット利益は、4%強~6%強と幅があります。
(2011年8月10日 村上忍記)

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