2014年連載①−(5)《チェーンストア経営の実務原則》

2014年連載①−(5)《チェーンストア経営の実務原則》
〜小売り業の発展と産業化を実現したチェーンストア方式〜

 〔まとめ〕

[あらためて、チェーンストア方式とは何か]

◎小売り業が近代産業の“一角に”名を連ねることを果たしたきっかけを作ったのは、地方の複数の革新的個人商店経営者であった

1880〜1890年代のアメリカの小売商業界をリードしていたのは、近代化しつつある大都市の顔である百貨店であった。
百貨店が、大都市だけでなく地方都市にまで進出するにしたがって、既存小売業界から出店反対運動がおこった。この時代の既存小売業界とは、家族労働を基本とした個人商店である。
実は、世紀の革新である<チェーンストア方式>へのきっかけを生み出したのは、その百貨店でもなく、次の10年間の小売業界を席巻した通信販売企業(シアーズ他)でもなかった。
それは、家族労働を基本とした小売り業者(商店経営者)だったのである。
問題意識の高い、才覚の優れた複数の商店経営者が時を同じくして、複数店のメリットを発見したのである。この発見はこのまま「全体の経営」と「各店の運営」分離することに繋がり、“脱商店経営者”が進むこととなった。

◎初期の革新事例

:1902年,JCペニーは、ワイオミング州の片田舎に縦横それぞれ25フィート、45フィートの何の変哲もない衣料品店をオープンさせたが、1958年全国に1700店の立派な衣料、雑貨店を展開している。
「一つだけの店を経営するよりも大きいこと、一、二かもしれないし、50になるかもしれないが、兎も角、何年も永続的に開業出来て、それらが一丸となって相互に補完し、協調しあいながらやっていくという・・・」というペニーの構想の協同経営者のサムズ氏と実行し、夢を追いかけ続けた。

:1918年、ロバート・ジャコビは、ペンキ店を開業したが、当時チェーンストアを始める気は全然なかった。心がけたことと言えば、専ら、普通のやり方とは異なった様子のペンキ店を何とか実現してみたいと言うことだった。まず第一に、店舗そのものがペンキの効能を永続的に宣伝するものとなるため、人目を惹き付けるように店舗をペンキで塗装しようと決心した。
第二に商機の方が自分の方にやって来るのを待つ様なことをしないで、自ら積極的に商機を追い求めることを決心した。〜中略〜
総合的な成果により、店舗は繁盛するようになったが、営業経費の中の最大の項目は宣伝費であった。それから、優れた考えがこの単一店舗の業者の頭の中に浮かんだ。「自分が今やっている宣伝は一つの店舗のために行っているが、これを二つの店舗のために行っても全く同様の効果を収める筈だ!そうすれば結局、この過重な経費項目を半減することになる。」
彼は、翌年第二の店舗を開業した。予測通り1店舗当たりの経費は激減した。その翌年、第三の店舗を開業した。
ここに至って、彼は二つ以上の店舗を経営することにより利益を増大させ得ることを悟り始めた。自己の仕入れ能力が増大することも解ったし、また以前より大量に仕入れることにより、商品を仕入れるために支払う代価も減少した。
1958年には、5州に126店を展開した。

《単一営業に伴う限界が取り除かれるならば、「販売量は適切に経営される店舗
の数」のみに依存する。販売量は無限に増大させなれる。》
〜黄金律(ゴールデン・ルール)〜

◎<チェーンストア方式>の基本的特性(ご利益)を示したA&Pの「エコノミー・ストア」

チェーンストアは、当初4店舗以上の店舗を所有する小売り企業の総称であった。つまり、個人商店とそれを脱した小売業者を分類したものでしかなかった。
それを小売り業を[産業]と呼べるレベルに高める方法論<チェーンストア方式>として確立することに貢献したのが食品小売業者空脱皮したスーパーマーケットである。
しかし、スーパーマーケット業態確立前に<チェーンストア方式>の基本的特性(ご利益)を整備確立した企業とその企業が開発したフォーマットがあった。
それが、A&Pが1912年に実験を成功させた「エコノミー・ストア」であることは先に紹介した通りである。
その新フォーマットは「エコノミー・ストア」と呼ばれ、商品の掛け売り、配達をやめた“キャッシュ・アンド・キャリー”方式で出来る限る安く売ることを指向した。
ここで、「エコノミー・ストア」の特徴を再度紹介することにする。

⑴「エコノミー・ストア」は、小規模店である
⑵「エコノミー・ストア」は、地代が安い
⑶「エコノミー・ストア」は、店内の作業を一人でこなす
⑷「エコノミー・ストア」は、店内の造作も控えめである
⑸「エコノミー・ストア」は、配達をやらない
⑹「エコノミー・ストア」は、掛け売りをやらない
⑺「エコノミー・ストア」は、商品を他店より安くうる
⑻「エコノミー・ストア」は、利益率が低い
⑼「エコノミー・ストア」は、最少の利益で満足する
⑽「エコノミー・ストア」は、売上の増加(多店舗化)しか頼るものがない

このA&Pの「エコノミー・ストア」の成功で、コモディティ商品の扱う業態の<チェーンストア方式>の基本ルールが固まったと言える。

この時期は、食品を主体に扱う小食品小売りチェーン企業は、A&Pの「エコノミー・ストア」の成功事例に触発されて、ローコスト型小型食料品店の多店舗化競争が急であった。この“餌食”をなったのは、個人商店であったことは言うまでもない。当然のことながら、チェーン・ローコスト型小型食料品店への反対運動各州に起り、州ごとに(アメリカは州単位で法律が異なる)各種出店規制が作られ、「最少の利益で満足する」ローコスト型小型食料品店には、環境が厳しくなってきた。

◎スーパーマーケットが、確立したセルフサービス・システムが、多くの業態
企業に<チェーンストア方式>の“ご利益”を倍化させた

セルフサービス・システムは、スーパーマーケット以前の食品小売り企業のいくつかが、実施してきたらしい。
そのセルフサービス・システムの革新性と効果性を基本に据えた“巨大な”(当時の感想である)食品が主体ではあるものの<生鮮食品(野菜、果物)を含めた大量陳列&大量販売>の新フォーマットが出現したのである。それがスーパーマーケットである。
つまり、この革命的変化は、食料品の安さの魅力を凌駕するものだったのである。
その特徴は次の通りである。

⑴今までに無い大型店舗
⑵精肉売場と野菜、果物売場を併設(初期のスーパーマーケットは、衣料、靴、
 家具までも売っていた)
⑶精肉売場と野菜、果物売場を含めて食料品の大量陳列、大量販売をする
⑷セルフサービス方式を採用(セルフサービス方式は、スーパーマーケットが
 開発したものではない)
⑸セルフサービス方式と大量販売の利点としての経費節減、思い切った廉価販
 売

この後は、食料品チェーンストア(A&P、クローガー等の大手グロサリー・チェーンを含む)は、大型スーパーマーケットの店舗を出店し、周辺の自社の小型店を3〜4店舗閉めていったのである。

◎小売り業の発展と産業化を実現した<チェーンストア方式>

ここまで<チェーンストア方式>が誕生する前のアメリカ発展の歴史を紐解くところから学んできた。国土を拡大し、移民が土地を耕し、農産物を作り、その流通を図った。輸送(鉄道)と通信(電信、電話)というインフラトという整い全国土に大小の都市が生まれ、大規模小売り業の発達する条件が出来上がった。
アメリカという国の広さと発展のスピードは、百貨店という業態、通信販売という無店舗販売方式では、カバー出来なかった。
あらゆる小売り業態が、この広い国土の消費者に商品とサービスを提供する方法として<チェーンストア方式>が誕生する必然性があったのである。
しかし、家族による単独店経営に基本とする商店主が複数店(多数店)経営に乗り出すことは、大きな革新が必要であった。
そこに、次の黄金律(ゴールデン・ルール)が生まれた。

《単一営業に伴う限界が取り除かれるならば、「販売量は適切に経営される店舗
の数」のみに依存する。販売量は無限に増大させなれる。》

これは、<チェーンストア方式>の基本はなく、前提である。
先の黄金律(ゴールデン・ルール)は、販売量(売上高)を無限に増大させるものであって、先見性のある商業者(商店主)や初期のチェーンストア指向経営者の工夫、努力で拡大(出店)のスピードを飛躍的に高める方法また収益性を維持、拡大する方法論を体系化して<チェーンストア方式>に結実させたのである。

◎科学性、合理性、効率性を追求する<チェーンストア方式>

<チェーンストア方式>は、科学的で合理的な考え方を小売業界にもたらした。その目的は、収益性と労働環境の整備(労働力の確保)である。
と言うことで、<チェーンストア方式>は、店舗の運営(オペレーション)面の整備と効率化主題であった。

<チェーンストア方式>の基本的条件とは、[標準化]である。
 〜科学的に収益性を追求するためには、多店舗管理と個々の店舗のシステム化が必要となる。システム化の前提は[標準化]で
  ある。〜

店舗運営における[標準化]への取り組みの狙い“ご利益”は何か。

⑴効率化を進める各種システムの導入が可能となる
⑵各店のお客さまに提供する商品とサービスのレベルを高位で維持
 出来る
⑶新たな労働力を確保しやすく、短期訓練が可能になる
⑷出店のスピードをアップ出来る
⑸政策を実務レベルで全店に瞬時に徹底出来る
⑹セルフサービス売場(商品群)を効果的に拡大出来る

◎<チェーンストア方式>を重視すべき[標準化]と<チェーンストア方式>を重視しないでもいける<チェーンストア方式>の違いは何か?

[標準化]や[セルフサービス]をいう<チェーンストア方式>の
“ご利益”に期待しないで成長、発展しているチェーンストア企業は多い。一方では、[標準化]や[セルフサービス]をいう<チェーンストア方式>の“ご利益”を活かして成長、発展しているチェーンストア企業(<チェーンストア方式>活用企業)がある。
この違いは何か? このことの解明とそれを受けての提案がこの連載の理由(目的)なのである。

◎<チェーンストア方式>は、雑貨、食料品などの「コモディティ商品」を扱うスーパーマーケット、バラエティ・ストア、ドラック・ストアで生まれ、育った多店化方式であるから・・・

<チェーンストア方式>の発展、確立の中心となった業態は、雑貨、食料品を扱うスーパーマーケット、バラエティ・ストア、ドラック・ストアなど、コモディティ商品を主に商う業態、企業であった。
これらは、問屋企業、百貨店、通販企業(いずれも大資本企業)と比べると後発、弱小小売業者が、大都市郊外、地方都市郊外でほそぼそ始めたお店であった。
当初は、大資本小売り業とは、競合しない商品、立地で力をつけてきた。しかし、後発業態、企業でしては、“安売り”を売り物にせざるを得なかったのである。しかも、商品の仕入れ条件は先進大手企業のバイヤーに敵う筈も無い。
「低値入れ」商品の「安売り」という条件で生き残るためには、「ローコスト運営」が絶対条件であった。
そのためには、

⑴最大の経費項目である人件費への抜本的対応策
⑵地代、家賃を可能な限り落とす対応策
⑶可能な限り建物に金をかけない対策
⑷少ない利益で事業を存続させる方策
の対応ノウハウが<チェーンストア方式>の基本だったのである。
科学的な運営方式に関しては、スーパーマーケット企業が製造業の工場管理のノウハウを本格的に導入した。

◎<チェーンストア方式>は、価格競合を支配しようとする(価格競合下で勝ち残ろうとする)企業(ウオルマート、エンドウ・チェーン)か、価格で差別化しようとする(価格競合下で生き延びようとする)企業がとるべき方法論である

今日は、一億商品、サービスの[コモディティ化]時代である。
これまでは、商品、サービスの機能や質が他社より優れていれば競争に勝てた。
しかし今、機能上の差別化がますます難しくなってきている。差別化が続かない時代、これが[コモディティ化]時代の現実である。
この対応戦略を試みる事例は多い。
例えば、〔高質スーパー〕への挑戦である。これは、スーパーマーケット企業の典型的“脱”コモディティ・フォーマットである。だが、成功例を少ないようである。
[コモディティ化]時代の大手小売り企業の代表的戦略は、PB商品の開発であり、この成功はメーカーで脅威を与えている。

今、アメリカの小売り業界は、ウオルマートが席巻しているが、EDLP(エブリー・デイ・ロー・プライス)の同社は<チェーンストア方式>の代表例である。
日本の<チェーンストア方式>の基本に据えている企業の代表例は、エンドー・チェーン、西友(ウオルマート)、ベルク、しまむら、西松屋・・・の企業名が思い浮かぶ。いずれもローコスト・オペレーションが特徴の優良チェーン企業である。

◎<チェーンストア方式>活用で自社を店舗運営(オペレーション)を見直して、さらにローコスト化を目指すことは、全てのチェーンストア企業で必要である!

差別化出来る商品、サービス、又は顧客に経験価値を提供するチェーンストア企業は、<チェーンストア方式>の特徴である[低価格]を必要としない企業が中心である。つまり、高付加価値商品、サービスが“売り物”である業態は、ローコスト化を指向するよりは、コストをかけてもさらに付加価値を高める努力をすべきである。
しかし、このような企業は、少数派である。と言うことは、ほとんどの我が国をチェーンストア企業は<チェーンストア方式>を学び、我が社(我が業態)に必要は要素を導入すべきである。
<チェーンストア方式>は、店舗運営の標準化戦略、マルチ・ジョブの店舗運営、店舗作業の単純化、最小人時での店舗(部門)運営に挑戦、セルフサービスを超えるローコスト運営の開発への挑戦、最低の売上(客数)で利益を出す運営で挑戦などである。

〔完〕

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