[第2章]レイバースケジューリングの活用の場としての近代的小売り業の経営方式チェーンストア(チェーンオペレーション)

近代的小売り業の経営方式と言えば、チェーンストア(チェーンオペレーション)を指します。現在、特殊な専門店を除けば殆んどの小売り事業は、チェーンストアという経営方式をとっています。
しかし、近代的小売り業のルーツは、百貨店であり、最初の大型小売り業として、数々の近代化のための革新を実施し、近代小売り業の基礎を築きました。

アメリカの流通分野は、当初“卸売商の独壇場”であったのです。卸売商の隆盛は、1880年代初期には頂点に達しました。その後も卸売商の総数は増加し続けましたが、その市場占拠率は低下していきました。商品が直接製造業者や加工業者から小売業者に渡っていったからです。

最初の大型小売商である百貨店の発祥は、1860年代と1870年代のことでした。そしてこれらの百貨店は、アメリカの大都市において成長しつつあった都市市場に向けて“百貨の”販売を行ったのでした。
農村市場への供給を目的として1870年代に通信販売業が生まれましたが、その全面的開花(業態として)は、19世紀末以降のことでした。また、小さな都市や町あるいは主要都市の郊外には、チェーンストア(小型雑貨店、コモディティ商品を販売する小型店チェーン等)が進出したが、これが規模と数を増加し始めるのも、1900年以降になってのことでした。
ここで、ちょっと注目して頂きたいことがあります。初期(この時代)の小売り業は、業態として確立されておりません。とりあえず、三つのグループに分けて考えるということです。特に三つ目のグループの“チェーンストア”は、後発で、非力な独立小売業者で扱う商品もまちまちで、共通点として“多店舗”展開を指向したので“チェーンストア”を呼んだのです。

◎ 初期型百貨店グループ

第一の好立地(大都市)を百貨店グループが独占して、一時代を築きました。
百貨店(都市型大型店の何でも売っている店型)は、当時一番強いグループで、都市という人口密集地を独占していました。品揃えを豊富で、価格を安く、収益性を一番よいグループです。多分、品質的にも一番信頼されていたのでしょう。
おおむね、どの百貨店も同じ背景(卸売商のあまり儲からない小規模な小売り事業部門)から生まれ、同じような拡大戦略、品揃え戦略、価格戦略、経営管理方式ととって一つの「百貨店」という業態に収斂しました。
経営手法においても他の二つのグループより優れており、部門ごとに全権を持ったバイヤーがおり、商品仕入のみならず売場の管理、販売員の管理まで指揮していました。バイヤーの経営管理指標は、売上に対する粗利益率、商品回転率でした。この指標は卸売業時代から受けついたものです。このバイヤーの能力の高さに裏付けられた高い商品回転率により、<品揃えの豊かさに加えて、より低いマージンで、より低価格で販売する!>という戦略で、百貨店は、他の二つのグルーブを同一地区(市場)では、存在(存立)を許さなかったのです。
しかし、百貨店業態は次第に変質していきました。客層をより高く設定し、高級商品を高級な雰囲気の売場(店舗)で売る“今日の百貨店”に変わっていきました。
彼らが開発した数々の経営手法の多くは、他の二つの後発グループに引き継がれたのでした。

◎ 通信販売から発展したグループ

アメリカ独特の経済発展の歴史的特徴に乗って成長した格好の事例は、三番手グループの通信販売業の隆盛です。
新しい輸送(運河網〜帆船から蒸気船〜、鉄道網〜石炭、電力〜、道路網〜馬車からトラック〜)、通信技術(電信、電話)に対して、直接的に反応したのは、通信販売店でした。
時代の追い風をまともに受けたのは、二番手グループのシアーズの筆頭にした通信販売グループです。豊潤な農村市場(アメリカは“”農業、牧畜業国なんです!)シアーズは、通信販売を力を蓄え、製造小売り業として長らく(ウオルマートに小売り業トップの座を譲るまで)小売り業トップに君臨しました。

◎ チェーンストアのいう経営方式を武器にしたグループ

三番手グループには、あらゆる小売り業態が入っています。このグループは、大型小売り業が、地歩を確立していない業種、部門で始まった中小企業群です。スーパーマーケットの前身企業(A&P、グローガー、ジュエルTほか)、バラエティストア(ウールワースほか)などです。
三番手グループの“チェーンストア”企業は、一番手グループと二番手グループの経営ノウハウを必死に、従って完璧に学んでいました。在庫管理手法、粗利益管理手法を筆頭にあらゆる経営(店舗運営)手法を学んだことでしょう。しかし、如何せん、営業力が違います。同一市場では太刀打ち出来ません。従って、よりシビアーな管理技術を開発し、身につけたのです。
三番手グループ企業の持ち味は、多店舗管理ノウハウと(これが一番重要なのですが)驚異的な出店スピードを実現するノウハウです。

実は、チェーンストアグループは、百貨店、通信販売起業から、それぞれの経営ノウハウを学びきって、アメリカという広大は市場を制するための“最大の(最後の)切り札”であるチェーンストアのいう店舗展開方式とチェーンオペレーションという運営方法を確立したのです。だから、初期のチェーンストア企業は、大きな意味を有するわけです。

◎ 初期のチェーンストアの経営ノウハウ

三番手グループだった“チェーンストア”グループの企業も第一次世界大戦までに、先行していた百貨店、通信販売店と各地で直接競合するまでになってしました。ここに至って、通信販売企業(シアーズ、モンゴメリー・ウオード)も数百店のチェーンストア網を作り上げました。
チェーンストア企業は、他の大型小売り企業(百貨店、通信販売企業)が採用しているのと同じ一般的な組織構造に多少工夫を加えて利用しました。 チェーンストアには、主要な商品系列ごとのバイヤーがいて仕入れる商品の価格と商品量の詳細に関して意思決定を行いました。
チェーンストア企業、百貨店との基本的な相違は、その販売組織にあります。チェーンストアは、多数の地域に分散した店舗を管理しなければなりません。地区ごとに事業部長(支配人)がおり、彼は担当地域の店長の売上や財務成績を絶えずチェックする担当者と店舗を巡回指導する担当者を抱えてしました。
20世紀に入ると、成長力で於いてチェーンストアは、他の大型小売り業に対して差が際立ってきました。自動車を出現によって可能となった機動力の増大や郊外の急成長によって生じた消費者の購買行動の変化に対応出来るのはチェーンストアだったのです。
急速多店舗展開のノウハウとは、出店立地開発、店舗建設、従業員確保および教育訓練の実務ノウハウであり、ローコスト・オペレーション・ノウハウです。
科学的とまで言えませんが、合理的、効率性重視のいった観点から、標準化、マニュアル化が進んできました。

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