米国小売業SMチェーンの競合実態と生き残りの為の方策を探るセミナー

2012年度9月2日~8日

<SNSムラカミ研究室企画・指導>

米国小売業SMチェーンの競合実態と

生き残りの為の方策を探るセミナー

~旧来型SM店[Von’s]とコンボ型SM店[Albertson]

を比較実態調査し、日本のSMの生き残りの方策を探った!~

 ≪背景≫

このセミナーは、A社主催、SNSムラカミ研究室企画・指導の米国セミナーとして年1回開催され、今回第4回(4年目)を迎えた。つまり、3回の実施経験と3期分の既参加者、それに3回分の報告提案内容(実績)があるということである。

その上での今回のセミナーであることを前提に総括する。従って、本質的な問題提起も随所に加えた。

これまで(過去3回のセミナー)からの踏襲の第一は、参加者の構成である。まず、A社の社員に加えてお取引先さまの参加を得て行くことである(今回は21名中、9名~9社~)。次に、女性2名の参加である。

これらの踏襲は、このセミナーの基本的特徴と支えている。一種の緊張感と柔らかさと盛り上げ効果が特徴であり、当然とごとく踏襲された。

セミナー参加者集合写真(副店長リンダを囲んで)

≪今回の新たに追加された事項とその狙い≫

(1)密着調査店の変更

○主実態調査・観察店・・・・・・・・Von’s (開店後50年、800坪の旧来型SM店)

○サブ態調査・観察店・・・・・・・・Albertson(開店後30年、1000坪のコンビネーション・タイプSM店)

※主調査店Von’sは、宿泊ホテルから徒歩で20分、サブ調査店Albertson は、宿泊ホテルから“至近距離”という好条件である

(2)ムラカミ研究室として、両社とも何年にもわたってお付き合いがあるが、両店共に初めて接触した店舗での調査を試みた

○Von’s は、サンフランシスコのSafeway本部VPジョン・オブレイ氏からVon’sディビジョン社長(Ms.Rayo氏)を紹介して頂き、その結果最高度の対応を受けて、最高の条件の店舗を得た

○Albertson は、かねてより注視していた好立地店舗(宿泊先ホテルからの距離)と粘り強く接触・交渉して結果的に最高度の対応を受けることが出来た

○両店ともに、奇しくも女性副店長(Von’sは、リンダさん、Albertsonは、アナさん)が付きっきりでの対応を頂けた

(3)マルカイ視察後、同社社長松 秀二郎氏よりお話しを伺う

○マルカイ・ハワイの松リチャード社長にご紹介をお願いしたところ、店舗視察に加えて社長(松秀二郎氏)のお話しを伺えることになった。

≪セミナー総括(総論)≫

 今回は、最高度の環境条件で開催されたセミナーとなった。セミナー参加者も最高度の環境条件を活かしてセミナーを堪能し、最高度の満足したまとめ内容に達したと信じる。米国に於いてもスーパーマーケット業態は、斜陽産業である。これまでもディスカウント業態に食品小売りの主役の座を奪われ、近年は多様化と消費者家庭の貧困層の増加によりダラーショップに食い込まれている。
しかし、永い小売産業の栄枯盛衰の中で存在し続ける実態は、見方を変えると如何にスーパーマーケット業態が強く、他の業態に替え難い地域に密着した業態なのかという見方も出来る。

今回の調査店は、そのSMとしては、“しぶとく”業績を維持している店舗であるが、Von’s が開店後50年、Albertsonが開店後30年である。しかも、両店共に(SM業界での評価として)“繁盛店”である。

こんな例は、他の業態では考えられない。米国社会では、社会生活に欠くことの出来ない存在なのである。一般的言って(特に米国では)、スーパーマーケット店の衰退は、立地環境の変化、同業態の近接した競合、経営者の怠慢以外はないと言い切れる。
しかし、今回の調査店2店は、長年にわたって地域消費者の支持を得続けている姿は教訓的である。

※米国のSMチェーンでは、店長の給与の半分近くは、お店の利益高の決められた“パーセンテージ”で占められていた。最盛期には、基本賃金と同額以上の金額は上乗せされて、大手チェーンでは、10万ドル以上の年俸の店長が多かったのである。従って、優秀店長は繁盛店の店長の座をキープし続ける。繁盛店は、最高の管理運営が為され、繁盛店であり続けるのである。今回調査した両店もの好立地で(マーケット環境の変化もなく)、代々優秀店長が管理運営してきたと思われる。

◎SC(顧客満足)の正しい理解を学んだ

密着調査では、多くの実務的レベルでの“学び”を得たことは言うまでもない。
当然のことながら、繁盛店である両店共にCS(顧客満足)度は高い。
私の問題意識として、日本でのCSの理解が偏っているのではないかという認識があった。この問題意識への答えが今回の調査に得られたように思う。

結論的に言うと、スーパーマーケット業態にとってのCS要素の優先順位は、

①    立地
②    価格の安さ
③    品揃え(業態として)のマーケット(対象顧客)適合性レベル
④    商品鮮度(生鮮商品を中心に)
⑤    総合的な信頼感、安心感、安定感
⑥    親切さ
⑦    顔見知り度
⑧    従業員の接客態度

※[従業員の接客態度]は、8番目に位置することに注目してほしい。上記①~⑦のレベルが高ければ、従業員の接客態度は良くなる。従業員が自信を持って接客出来るからであ る。逆に①~⑦のレベルが不十分だと、[従業員の接客態度]は、“ごまかしの道具”でしかない。”マニュアル化”された接客と云う発想が生まれる所以である。「申し訳ございません」と云うお詫びの言葉を<接客○大用語>に入れて、毎日唱和訓練すると云う笑えない事実が多くの企業に存在するのである。

 参加者は、問題がこの優先順位とCS要素の広さの理解のズレだと気付かされた。また、結論的に言うと、CSとは現場の“行為(接客応対)”レベルの問題(テーマ)ではない。CSに関する企業理念、政策、システムの問題(テーマ)である。現場ではマネージャーは、企業理念、政策、システムを受けて、お客さまにCSを保証する役割を果たす。実務的に言うと、部下たちがお客さまにCS(満足)を提供し続けられるように環境条件を整えるのがマネージャーの最優先の責務をして行動し続けるのである。
そういった事実を目撃、確認してセミナー最終日に、参加者のまとめ報告は為されたのである。

国内で帰国報告として、成果発表を聞かれる企業幹部の方々は、CSをテーマとして掲げたチームの目撃事実の中身が、厨房での作業内容であったり、スケジューリングの見事さの指摘であったりすることに戸惑われるかもしれない。
だが、これらがCSを構築する(支える)実務なのである。
参加者はこれらの事実がCS(顧客満足)を生み出していると気付いたのである。
この事実をみても今回の参加者の“学び”は深い。
しかし、まだ、セミナー参加者には、戸惑いの方が大きいかもしれない。従って、従来の“常識”で否定されると黙っていまうであろう。今、日本のSM業界は、革新されなくてはならない。
≪革新は、既存の常識の8割を否定する!≫このような理解で、参加者の報告を“心して”聞いてほしい。A社の生き残りの為に。

◎グロサリー・チェーンと地域密着型スーパーマーケット・チェーンとの違いを知った

SMチェーンには、グロサリー・チェーン系のSMチェーンと地域密着SMチェーンがある。グロサリー・チェーン系SMチェーンの代表格クローガー、セーフェー、アルバートソンであった。
地域密着SMチェーンの代表格は、フロリダ半島をドミナントとするパブリックスであろう。ロスアンゼルスでは、ボンズ、ラルフスが地域密着型SMチェーンである。今日だは、一部を除いて地域密着型SMチェーンは、グロサリー・チェーン系SMチェーンの傘下にある。
しかし、グロサリー・チェーン企業は、完全にチェーンに飲み込んで店名までも変えてしまう戦略をとる企業(アルバートソン)と店名もその強みも残そうする戦略をとる企業(クローガー、セーフエー)がある。
今回は、地域密着SMチェーンのボンズとグロサリー・チェーン系SMのアルバートソンを並列対比分析出来る機会を得た。
グロサリー・チェーン系SM企業は、基本的に標準化と効率化を手段としてローコスト化を目指す。
彼らにとって、生鮮食品部門は“付け足し”である。マーケット・ニーズに従ってその売り場を拡大しても“付け足し”であることにかわりがない。
グロサリー・チェーン系SM企業にとっては、生鮮食品部門も効率化の対象にある。

一方、地域密着型SMチェーンは、生鮮食品部門が“命”である。この違いがどんな形で出るかは、まことに興味深い。今回は、ボンズとアルバートソンを対比分析した。
象徴的な事例として青果部門における〈シュリンク(ロス率)〉への対応を注視した。両店共に青果部門のマネージャーは、ベテランであった。両店の青果部門の売り場は、手の入った完成度の高いレベルを維持していた。ただ、並列対比するとボンズの売り場の葉物類は、ボリューム感があり新鮮そうだ。
これは、何かの違いの結果なのであろうか。
青果部門にとって〈シュリンク(ロス率)〉コントロールは、最重点テーマである。ボンズには、青果部門のロス率目標値は、5.3%である。8月度の実績は、5.6%だった。この道18年のベテラン・マネジャーのオスカーは、この結果については「満足ではないが、原因も分かっているのでOKである。」と言っていた。この直後にアルバートソンで青果部門でマネージャーに〈シュリンク(ロス率)〉について質問した。彼は「目標値は、4.5%だが、実績は、4.3に収めた。」と自慢気であった。

これらの事実からこのような推論が出来る。

◇グロサリー・チェーン系SMは、地域密着型SMチェーンより“1ポイント”程〈ロス率目標値〉は、タイトである。
◇グロサリー・チェーン系SMでは、〈ロス率目標値〉をクリアしようとする(下回ろうとする)。
◇地域密着型SMでは、〈ロス率目標値〉にステイ・クロウス(近い状態を維持する)する目安と捉えている。
◇地域密着型SMでは、5.3%程の〈ロス率〉が必要であり、グロサリー・チェーン系SMでは、4.5%で維持出来るということ。

勿論、地域密着型SMの青果売り場の方が消費者にとっては、魅力的であろう。何故、グロサリー・チェーン系SMでは、それで良いのか。グロサリー食品の圧倒的安さがあるからである。アルバートソンのロスアンゼルスでの評判は、「アルバートソンは、値段が高い!」である。アルバートソンの苦戦は、続きそうである。

◎《24時間サイクル・オペレーション体制》が店舗運営の基本にあることを確認した

ボンンズでの密着調査は、21時迄とした。この店の営業時間は23時30分までだか。
実は、我々は翌朝の開店時作業を注視したかったから、調査者の睡眠時間の確保を選んだのである。
開店時刻は6時だ。5時30分には、ホテルを出たい。歩いて20分で調査店(ボンズ)へ到着した。
納品業者の駐車スペースには、既に3~4台のトラックがあり、荷下ろしを開始していたが、いずれもベーカリーの業者である。
この時間、全ての出入り、商品の搬入は正面入口を使う。ナイト・クルーのリーダーが、中からロックを解除する。調査員(セミナー参加者全員)雪崩れをうって、そのそれの調査売り場、厨房へ走る。そのそれの売り場、厨房で予想通り(期待通り)の事実を目撃し、メモする。
昨晩の実態調査(19時~21時)と今朝6時からの実態調査は、米国SM店での店舗運営調査の“核心部分”である。

先進米国チェーンストアの店舗運営の基本である《24時間サイクル・オペレーション》の考え方とその基本的メカニズムを容易に理解出来るからである。

◇《24時間サイクル・オペレーション》は、店舗運営を24時間のサイクルで捉える。
◇《24時間サイクル・オペレーション》は、開店時刻、閉店時刻に左右されない店舗運営である。

開店作業、閉店作業がない(左右されない)店舗運営であるから、従って、開店時刻は“思いっきり”早く、閉店時刻は“思いっきり”遅い。
各部門の明朝作業に繋がる作業は、夜21時に完了する。青果部門では、平台の果物の陳列が完成し、担当者は、床を掃き清めて21時を迎える。
対面精肉売り場では、19時より厨房の清掃作業が始まる。まず肉のカッターの分解清掃、それから厨房の床一面に泡立つ洗剤を撒き散らす。この間、対面ケース前の床を磨く。厨房の床へ水を満遍なく撒き、要所をデッキブラシでこする。最後に、水を撒き、デッキブラシデッキで水分を拭き取る。
冷ケース内の商品は、多段(10段)のカートに移し、厨房内の冷蔵庫へ保管する。その際、大きなビニール袋で多段カートごと覆い保管する最後は、対面ケース内の清掃である。氷はトレイごとお湯で流し、トレイを洗浄する。
若いネーササンが19時から21時までで完璧にこなした。惣菜部門でも基本的に同じ手順であった。ただし、サラダ類は、冷ケースでそのまま販売態勢を維持して、翌朝新しいものと入れ替えた。閉店直前まで実売が発生するのであろう。
生鮮部門の《24時間サイクル・オペレーション》は、前日の21時から翌朝の6時に繋がっている。
深夜には、グロサリーのナイト・クルーが翌朝の6時を目処に補充作業を終わらせる。
これがセミナー参加者が目撃した《24時間サイクル・オペレーション》の実際である。
ここに開店時刻、閉店時刻が、店舗運営上何の支障をもたらしていないことに注目してほしい。

我々が米国の先進SMチェーンから、実務的に学び取るべきテーマは、《24時間サイクル・オペレーション》の理論と実務であろう。

                                                                                               2012年9月8日
村上 徳忍(日本への機中にて)

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コメント

  1. 村上徳忍 より:

    現地入手情報(信憑性高し)
    1.フレッシュ& イージ―が、トレーダー・ジョーズから人材をスカウトしたそうである。その意図は不明だが、現地では、興味深く見守っているようである○
    相当なレベルの人材のスカウトであれば、双方に影響、変化は出るであろう。

    2.ホールフーズの勢いは相変わらずと見えるが、ここにきて、出店したマーケットの規模他によって、業績がいまいちの店舗が出てき始めたという。
    これまでの勢いが鈍化するのか、業績数値の変化を見守りたい。

  2. 村上徳忍 より:

    FacebookでAlbertsonのLabin元店長がイタリアへの新婚旅行(2回目でも!?)の写真を掲載いました。Facebookは、何が書くと本人から何か書いてきますので苦手にす。特に、英語ですから。相手に欲求不満で終わりです。とにかく、おめでとうございます。