〔レイバースケジューリング・システム〕事始め

本編④【標準化】の正しい理解と取り組み
〜【標準化】を企業経営の基本に据えた小売り企業が勝ち残る!〜

チェーンオペレーションの基本が【標準化】にあることは、周知の事実であるはずですが、そのように経営されているスーパーマーケット企業は(日本においては)少ないのが実態です。
スーパーマーケットがその社会的存在価値を発揮するためには、多店舗化が絶対的な条件です。専門化(特殊化)を目指すスーパーマーケット企業は別です。それは最早スーパーマーケットではなく、専門店と呼ぶべきでしょう。
「デパ地下(デパートの食品売場)のようなスーパーマーケット!!」などがその例です。
米国の先進スーパーマーケット企業も数百〜一千店の店舗展開の中に数店舗の特殊店舗を持っていますが、それだけのことです。

多店舗化の方法論が、【標準化】を基本とするチェーンオペレーションです。
チェーンオペレーションという方法論は、スーパーマーケット企業が、その(地域社会のインフラとしての)存在価値を発揮するために必要不可欠です。

◎【標準化】とは

科学的な店舗運営(レイバースケジューリング)における【標準化】とは、《[標準]を会社として設定して徹底すること》です。

【標準化】(店舗運営関連)の対象は、

(1) 作業手順の標準化
(2) 作業環境の標準化
(3) 作業道具の標準化
(4) 部門、職務に担当作業項目の標準化 です。

◎   【標準化】の〔レイバースケジューリング・システム〕での意味は、適正な必要な時間の設定([RE]の設定)にある

業務、作業の【標準化】の〔レイバースケジューリング・システム〕での意味は、適正な必要な時間の設定にあります。

店舗で発生する(実施される)業務、作業には、実施に必要な時間を設定します。その時間を[RE]と呼びます。

[RE]とは、Reasonable Expectancy の略語であり〜日本語訳では、“適正な期待値”〜です。

全店で決められた業務、作業を“キチンと”実施させるためには、公平な人時割り振りが必要です。そのためには、すべての業務、作業の[RE]が設定させている必要があります。

[RE]とは、

①.      個々の業務、作業に対する純粋に必要な時間です

②.      個々の業務、作業を基準通りに行うのに必要な時間です

③.      個々の業務、作業を平常な状態で行うのに必要な時間です

[RE]の設定は、[B+ワーカー]で測定し、設定します。

[B+ワーカー]とは、<企業が期待する業務、作業の質と量を、企業が設定した基準に基づき、意識せずにこなすことの出来る従業員>のことです。

つまり、[RE]は基準値であり目標値なのです。

◎   科学的な店舗運営の基本は、[店舗運営基順書]の活用と内容の維持(アップデート)です!

店舗運営上の“標準”を管理、活用する道具として、[店舗運営基順書]を用います。
[店舗運営基順書]では、
①. 店舗運営上用いる言葉の定義
②. 店舗運営上用いる道具の指定
③. 職務の定義、範囲の指定
④. 作業手順の指定(マニュアル)
⑤. 業務手順の指定                              ⑥.[RE]の設定                                ⑦. 各種の決め事 を管理します。

◎ [店舗運営基順書]の経営実務(店舗運営)上の重要性

チェーンストア経営においては[店舗運営基順書]が経営(店舗運営)の要(かなめ)です。
最近、<無印良品は、仕組みが9割り!>のいう本が出版されていますが、その“9割り”の根拠は、[店舗運営基順書]の存在と重要性にあります。
同社には〔MUJI−GRAM〕という[店舗運営基順書]が存在し、経営(店舗運営)の基本として機能しています。マーケティング主体の企業と見られている無印良品の経営の基本が、実は仕組みの重視、活用にあったという意外性を狙った“ネーミング”です。その真意は、無印良品という企業がチェーンストアとしての“強み”と持った企業であるという‘種明かし’です。
無印良品と同様の強みを示しているチェーンストア企業には、しまむら、ベルクがあり、高収益企業です。

店舗運営の基準をしっかり決めて維持することが、どんな強みを生むのでしょうか。
◇ 全店で企業の政策が実務として徹底される
このことに尽きます。

<政策の徹底を自社の強みと位置づける>のです。そのような店舗運営を指向するのです。

この種の組織的強みを持ったチェーンストア企業は、チェーンオペレーションの強みを遺憾なく発揮します。
* チェーンストアとしての競合力
* チェーンストアとしての収益力
* チェーンストアとしての拡大力
その基本に[店舗運営基順書]があるのです。

※ 「作業」と「業務」
一定の目的で実施される「動作」の固まりを「作業」と呼びます。
一定の目的で実施される「作業」の固まりを「業務」と呼びます。
一定の目的で実施される単独「作業」と「業務」で「職務」が構成されます。

◎ 守りのための[店舗運営基順書]、攻めのための[店舗運営基順書]

これは重要な視点です。レイバースケジューリング・システムの確立を目指す取り組みとして、月次の<人時コントロール>を目的として入る場合と、<政策の徹底>を目的として[店舗運営基順書]の作成、運用から入る二つが一般的です。

月次の<人時コントロール>を目的として入る場合は、[店舗運営基順書]を“守り”の道具と位置づけて活用しようとする傾向が極端に出がちです。この場合は、これまでの“徹底”が主目的ですから、既存店での業務、作業の統一に重きを置きます。
この場合、本部事務局、スタッフから、おかしな(間違った)理屈が発生します。<徹底するためには、新たな決め事(変更)を作らないこと>、つまり、徹底することが目的であり、基順書内容の形骸化やむなしと云う考え方です。

これに対して、攻めのための[店舗運営基順書]では、[店舗運営基順書]を新たな政策を徹底する手段と位置づけます。形骸化した“古い決め事”の徹底よりも、新しい価値ある(競合他社と差別化出来る)新しいやり方、決め事の全店徹底実施を目指します。
攻めのための[店舗運営基順書]を指向する企業では、[店舗運営基順書]内容の徹底の程度より、[店舗運営基順書]の内容がどれだけ“差し替えられたか”を重視します。勿論、“攻め”“も”守り“も両方とも重要です。“守り”一辺倒はまずいと云うことです。

先に紹介しました無印良品、しまむら、ベルクは、“攻め”のための[店舗運営基順書]を指向する企業です。新たな政策が随時“実務行動”として[店舗運営基順書]に組み込まれます。つまり、新しい作業項目、決めことが追加され、既存の作業項目、決め事が変更されます。その数(量)が、革新性のバロメーターなのです。

◎ [店舗運営基順書]の内容、項目

[店舗運営基順書]の内容の中心は、業務、作業の手順書です。
以下の通りの項目立てです。

店舗運営基順書の目次 参考例です
店舗運営基順書は、部門別に管理されます。店長、グロサリー、青果、水産、
畜産、総菜、管理・・・

<分類>
〜この分類は、店長、管理を除く部門の事例です。〜

1計画と発注
2管理
3会議とコミュニケーション
4清潔な店舗維持プログラム
5準備
6売場と商品
7対面
8教育と訓練
9安全と衛生
10スペシャルファクター

<分類ごとの業務項目>

1計画と発注

(1) 月間計画の立案
(2) 週間商品計画表の作成
(3) 勤務スケジュール表の作成
(4) 売価設定と変更
(5) ・・・
(6) ・・・

2管理

(1) 競合店調査
(2) 勤怠カードの点検と締め
(3) 労働時間報告書の作成
(4) 仕入れ管理台帳の記帳
(5) ・・・
(6) ・・・

3会議とコミュニケーション

(1) 情報の伝達
(2) 月間情報の理解
(3) 週間商品情報の理解
(4) デイリー情報の理解
(5) ・・・
(6) ・・・

4清潔な店舗維持プログラム

(1) プログラムの考え方と目的・効果
(2) オープン・ケースの清掃
(3) 後方の清掃
(4) 後方の備品・什器の清掃
(5) ・・・
(6) ・・・

5準備

(1) 売場作業場の点検
(2) 開店前の売場の点検
(3) 計量とパックの準備
(4) POPカードの作成依頼と掲示
(5) ・・・
(6) ・・・

6売場と商品

(1) 品質管理プログラム(ピックアップルール)
(2) 閉店後の作業
(3) 高回転商品の手直し
(4) ・・・
(5) ・・・

7対面

(1) 対面販売
(2) ・・・
(3) ・・・

8教育と訓練

(1)6ヶ月見習い期間終了研修
(2)入社2年目研修
(3)中途入社社員研修
(4)・・・
(5)・・・

9安全と衛生

(1)「食品衛生」の知識
(2)「法律」に関する運用基準
(3)日常業務の「安全および衛生」の実務
(4)・・・
(5)・・・

10スペシャルファクター
※月次以外(実施頻度が少ない)業務

(1) 旧盆商戦商品計画
(2) 旧盆商戦報告書
(3) 管理者集会の出席
(4) 人事評価

<基順書シートの内容事項>例

〔店舗運営基順書〕には、店舗運営上のあらゆる「決め事」、定義、マニュアル類が管理されます。しかし、最も多く管理され、差し替えられるのは、日常業務、作業項目です。

その内容には、つぎの事項を決めておくことが大切です。
(1) 業務項目名
(2) 定義、内容、範囲、実施頻度(実施時刻等)
(3) 目的と効果
(4) 実施手順(使用する道具の指定)
(5) 注意事項、基準所用時間
(6) 使用用紙(フォーマット)記入例付き
(7) 改訂期日

◎ 【標準化】を企業経営の基本に据えたチェーン小売り企業が勝ち残る!

【標準化】が、チェーンオペレーションの基本であることを否定する人はいませんが、軽視する経営者が多いのが何故でしょうか。
多分、その場対応(後手に廻ると、“その場しのぎ”)が、経営(店舗運営)の中で習慣化されているのでしょう。たしかに、小売りの現場は、”その場対応“の連続です。
優良チェーン企業では、よい“その場対応”事例の【標準化】を促進しています。
それが〔店舗運営基順書〕の内容とボリューム(無印良品では、2000ページと言います!)を“誇り”とする理由です。毎月の〔店舗運営基順書〕の追加、改廃作業を重視する理由です。
先に【標準化】(まず、決める、決められたことを“きちんと”実行すること)を経営(店舗運営)の基本に据えた優良チェーン企業(無印良品、しまむら、ベルクほか)は、収益性が高位安定しているのが共通する特徴です。
それは、レイバースケジューリング・システム(チェーンオペレーション)の結果なのです。

〜④おわり〜

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